300万 vs 10のマイナス21乗
院長の時々日記
人間はやはり、聴覚よりも、視覚が圧倒的に”興味”が有るのだな…と思いました。
300万は何の事?と言えば最近賑やかなブラックホールを直接“見る”、すなわち”視覚”でとらえたという話です。
イベントホライズンプロジェクトの電波望遠鏡の精度は人間の視力で言えば3百万=3、000、000に相当して、月の上のゴルフボールを見分けることが出来る”視力”と言われます。
M87星雲中心の巨大ブラックホール。
左の画像が今回の観測結果、右が理論予測段階の模式図で、半分明るいのがミソなのです。
具体的な水平面が判りませんが、今後X線などほかの観測結果の分析が終わればブラックホールがどのように回転していて,降着円盤が本当にあるのか、はたまたジェットの有無は?など、明らかになるのでしょうか。
地球を巨大な電波望遠鏡に見立て、地上6か所の電波望遠鏡を原子時計で協調させて、干渉させ、得られた5ぺタバイトのデータを各国が二年かけて、違うアルゴリズムで解析して照合し同じ結果にたどり着いたとのことです。
…VS…
もう一つの数字は、以前書いた重力波観測の事で、ブラックホールをレーザー干渉計で”聴く”というプロジェクトですね。
観測精度では全く桁違い、微弱な重力波を捉えるために必要な精度、10のマイナス21乗はそのまま書けば 0.000000000000000000001 ってなわけで、どんな精度かと言われれば、地球と月の距離が原子核(原子ではない)程度揺らいだ事を感知する精度です。
重力波は時空を伸縮させる波として地球に到達しますので、音に変換可能です。
表は中性子連星の合体の様子ですが、同じようにしてこの精度を武器に、何億光年もの彼方で発生したブラックホールどうしが合体するときに発生した重力波を”聴く”のです。
勿論、精度の数字で単純な比較などできるわけは有りませんし、Event Horizon Telescopeは6か国が共同した文字通り世界的な壮大なプロジェクトですが、これに先駆けることアメリカのLIGOは重力波によって、ブラックホールの”直接観測”の偉業を成し遂げていて、ノーベル賞は確実で、今でも次々に直接ブラックホール、中性子星合体に関するデータを積み上げているのです。
院長はいまでもスゴイ、スゴイと感動する重力波観測なのですが、どうもやはり、世間の騒ぎかたの”温度”を見ていると”聴覚”は”視覚”と、闘うと部が悪いような気がします。
百聞は一見にしかずとは、よく言ったものだ、悔しいけれど…と、つくづく実感する耳鼻科の院長でした。