光慣れ!(アレッ?光在れ??)
院長の時々日記
仕事柄、ヘッドライト(額帯鏡)、顕微鏡、内視鏡などの補助光を使った診察道具を多種使用しますが、もちろん使いこなしには”慣れ”が…
これらの道具に必須なのが『光源』です。
臨床で問題なのはそれぞれの光源によって色温度が違うということです。
どういうことかというと、当院でもヘッドライトはLED、顕微鏡はハロゲン、内視鏡はHIDを光源としますので、それぞれ光の”色”が異なります。
皮膚科の先生には、『自分好みの電球』というものがある方が少なくないと聞きます。
『所見』と呼ばれる、「視診」による診察が重要な診療科だからです。
皮膚の状態、透けて見える血管、落屑、びらん、潰瘍、もろもろの皮疹など、知識と、経験に即した内容の判断に不可欠の、専用とも言える”光”が必要になるわけです。
耳鼻科の場合にも似たようなことが有ります。
光源が変わると、動脈、静脈、時に神経との違いが分かりづらくなります。
白熱球と、LEDでは血管の見え方が全く違います。
ご存知のように、一個のLEDは一つの色しか出せません。
白い光にするには、赤、緑、青の三灯のダイオードの光を混ぜるか、単色光にフィルターをかけるかします。
通常青っぽく見えるLEDの光は青色ダイオードの光に、黄色いフィルターを付けて”着色”したものです。
皆さんも蛍光灯や、白熱球の下で写真を撮ったとき,思ったのと違う、みょーな色の写真を経験したことはありませんか?
現在はカメラもデジカメで、AWB(オートホワイトバランス)が普通なのであまり意識しないかもしれませんが、色温度は、蛍光灯や、白熱球のほうが、太陽光色とのズレが大きく、LEDは”調整”された光のため『太陽光』のホワイトバランスでも、キレイな発色を示します。
しかし、いまでもLEDの光を苦手とする、Dr.が多いのが現状です。
いかんせん、我々は長年、白熱球のもとで、教育を受けて、トレーニングを受けて、実地を積み重ねてきたので、慣れ親しんだこれらの『光』それらにとって変わるに足るLEDの光源は、慣れの問題だけでなく今のところ、まだ無いようです。
まあ、世の流れとして、ほとんどの光源がLEDにとってかわられるのは時間の問題でしょうけど…。
…おまけ
LEDの光には、虫が寄り付きにくいと言われます。
実際、青色ダイオードの光には、走光性(虫がよってくる度合い)が少ないという実験報告があります。
ただ比較の問題であり、虫が寄ってこなくなるわけではありません。
都市伝説の「LEDは悪い光を出しているから虫が避ける」というわけではなさそうです。
むしろ問題はダイオードの点滅と”不自然性”です。
LEDは交流電源で使用すると高速で点滅しますが、発光の特質上、明滅ではなく、点滅します。
完全に点く、点かない、を繰り返すので、輝度の差が激しく、使用条件ではちらつきとして不快と感じることがあります。
九州ではちらつきの周波数は120Hzになります。
人間の目は24Hz以上の点滅は感じないはずなのですが、事はそう単純ではありません。
人間の能力を舐めてはいけません?
実際光を視野に入れたまま首を振ったりしたときに、点滅を残像として自覚した経験が有る人は多いはずです。
覚醒状態ほど、この感覚は鋭く、目がさえているほどこの違和感は強く感じるので問題となりがちです。
また前述のように、通常の一灯使用のLEDでは、簡便的に白色光を作るために、青色ダイオードの光に、黄色(緑と赤の混合色)のフィルターをかけて、見かけの白色光を表現しています。
詳細は省きますが、(虫も寄ってこない!?)極めて人工的な白色光の出来上がりです。
フィルターを何種類も使って、色を濃くすると、せっかくの明るさが失われますので、効率的ないい方法なのですが、点滅と、三原色の不自然さが加わり、あのコンビニに入ったときの不自然な光を浴びる感覚が生じると考えられます。