祝!FE108sol 再販 人間の可聴帯とピアノ|大牟田市の耳鼻咽喉科立石医院

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オーディオ・音楽関係

祝!FE108sol 再販 人間の可聴帯とピアノ

オーディオ・音楽関係

<本記事は2018年に記載したものを修正、加筆したものです。>

ピアノは極めて科学的に発達してきた”理性的な楽器”といえます。

…まあ、現在生き残っている楽器は皆そうかもしれませんが…。

人間の可聴帯域の周波数は20Hz~20,000Hzですが、音程として認識できる周波数は30Hz~4,000Hz程度です。

これより下の音はゴロゴロという唸るように感じ、高い音は耳障りなノイズとして”感知”できるだけになります。

この、人間が好む、30HZ ~4,000Hzの音域を諧調の幅として、88鍵盤に割り振ったのが、現代のピアノです。
もちろん、弦の響きには倍音というものが生じますので、周波数は2万Hz付近まで届くときもあれば、響板の効果で抑制のきいた音にもなり、この付近のチューニングが各ピアノの特徴的な音として表現されることになるわけです。

ただし、更なる音楽の表現方法として、ピアノに今一度のブレークスルーを求めた作曲家(プゾーニ他)が出現するのは歴史の必然で、彼(ら)がベーゼンドルファーに働きかけて作製したのが、インペリアル290(97鍵盤)の原型とされます。
290の特徴はなんといっても大きな響板で、加えて追加の9つの鍵盤(エクステンドキー)のために張られた超低音のための弦。
最も低い弦は16Hz、滅多に使用されることはないので、鍵盤は黒く塗られて通常は蓋までされます。

これらが相まって、インペリアルサウンドといわれる独特の中低音の響きが生み出され、”生ける伝説”の楽器が誕生します。
ただし追加の鍵の音はあまりに低く、”理性”ではなく主に”感性”の領域のため通常のスコアにはあまり登場することが無いのも事実です。

プゾーニはスコアは残しましたが、彼自身が97鍵盤を弾くことは叶わなかったようです。
同時代のドビュッシー、ラベル達はこのベーゼンドルファーの響きの効果、を狙ったピアノ曲を作曲しています。

ドビュッシーの「前奏曲集」『音と香りは夕暮れの大気に漂う』の最後のパートは”通常”の88鍵盤にもある最低音Aが印象的に使用されます。
ベーゼンドルファーは、チューニングやマイクのセッティングによる違いはあっても、低音の弦の響きが独特なので結構分かります。
私にはドビュッシーがベーゼン…のこの”A”の音色のために、この曲を作ったのではないかと思える位心に響く音です。
(※ドビュッシーは『ベヒシュタイン』を”愛した”とされますが、愛用のピアノは『ブリュートナー』でしたので、彼の”愛”は結構”柔軟”かもしれません)

院長の手持ちのドビュッシーは廃盤なので、皆さんも手持ちのCDを、チェックしてベーゼン…の音を探してみませんか?

…で、やっと写真のCDの件ですが、そもそも収められている『沈める寺』は現在のスコアでは、通常のピアノのキーで演奏可能ですが、敢えて本来のエクステンドキーの超低音を使用した演奏がいくつかあり、上記のCDもその一つです。
演奏はキャロル・ローゼンバーガーさん。
ダメ耳の院長はこのCD、演奏の評価は皆さんにお任せして…、レーベルは音の良いことで知られる『DELOS』です。
ホールの理想的な席に座った時に聞ける音を狙ったといわれる本作は、オンマイクに過ぎず、ピアノとホールの音響を含めての全体の音の響きを重視した録音が中心ではないでしょうか?

ローゼンバーガーさんは1970年代デジタル録音の最初期の頃、当時の最高の録音機材に相応しい、最良の”伴侶”を捜し求めたときにインペリアル290と出会い、”一目で恋に落ちた”と回想しています。

ああ、”伝説”に相応しいエピソードではありませんか。

…で、

本当はこっちがメインかも?インペリアル290のエクステンドキーとZ1000スピーカーの組み合わせで、院長が気になっている Milcho Leviev の「BULGARIAN PIANO BLUES」です。
ピアノのソロで、カテゴリーはジャズですが、全然マイルド(褒めてる?)、ベーゼンドルファーインペリアル290のエクステンドキーが活用され、特に「B MAJOR!」は、派手さは有りませんが、オーディオシステムの特にスピーカーの能力を”地味に”試されるのではないかという、”弦”のスピードと、パワー、切れ味です。

しかも、演奏は素晴らしく、しっかり音楽的に楽しいという秀作。
オーディオチェックファンの方も、一枚持っていて損はないのではないかと思う優秀録音です。

彼は一年ほどの間に、もう一枚「Man From Provdiv」というピアノのソロCDを出しています。
⇒スタインウェイとベーゼンドルファーでちょっと紹介しましたが、いずれも「Ma recordings」レーベルです。
これまた、内容が素晴らしく、院長が一瞬でもピアノの演奏に”怖さ”を感じたほどのすさまじい演奏(褒めてる!)と録音が含まれるのですが、惜しむらくは廃盤?のため市場の枚数が少なく価格も怪しいです。

ほぼ同時期に、同じ「ハーモニーホール松本」で、同じエンジニアのもとで、同じインペリアル290を使用して録音されていますが、いずれのピアノ調律も水島浩喜さん、と聞いて、おおっ、と思う人がいるかも…。
二枚のCDに収録されたそのピアノの響きには、チューニングによるものか、録音機材のセッティングのためか微妙に、しかし明確に異なるものを感じさせますので、オーディオチェックマニアには録音の対比も聴きどころです。

『Ma …』レーベルは、常に二本のマイクロフォンのみでステレオ録音されます。
プロデューサー自らがピアニストのため、”音”に妥協が無いレーベルですが、演奏が素晴らしいことが第一。
そして広いダイナミックレンジ、ほぼ無音から立ち上がるS/N比からして驚異です。

最高のホール、最高のピアノと調律師に、こだわりの録音機材と技術。
これらを駆使して”最高の二人のピアニスト”が作り上げた、ピアノソロCD。
「DELOS」レーベルとは異なるアプローチの「Ma Recordings」

いずれも1980年代の録音ですが、音質は極めて良好でピアノの響きとZ1000との相性は素晴らしいと実感できる一枚です。

ハイスピードで高音から得意なユニットを抱く、中音から低音の表現が豊かな、大き目の躯体のZ1000。
そこから繰り出される、ベーゼンドルファーインペリアルの文字通り歌うような、繊細でしかし底力のある、弾き手を選ぶ音。

どうです?ちょっと聞いてみたくなりませんか?

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